時のなかの赤い糸
君と過ごした時間
「おはようございます土方さん」
食堂にやって来た遥の声に、皆の肩がビクッと揺れた。
たった今、遥の事を話していたところだったのだ。
「……おはよう綾野。元気か?」
「何言ってるんですか!あたしはいつでも元気ですよっ」
遥の振る舞いを全員がジッと見つめた。
―――遥に与えられた記憶は、確かに今までの事を指していた。
タイムスリップや池田屋事件。
遥の頭の中にはちゃんとその事が埋め込まれていた。
だけど、失ったのは心。
その時に思った事
怖いとか、嬉しいとか、楽しいとか、悲しいとか
遥の記憶からそこだけがスッポリ抜けていたのだった。
「遥、本当に大丈夫なのか?」
藤堂が心配そいな表情を遥に見せた。
隊士は本当にずっと遥の様子を見続ける。
遥は頷いていつも座る位置に座った。
「記憶、戻ったの?!」
誰かが声をあげたのに、遥はにこっと頷いた。