時のなかの赤い糸
思い出したい
だいたい掃除が終盤にかかったころ、神社の境内からお坊さんが出てきて抹茶をくれた。
「休憩なさって下さいね」
「ありがとうございます」
抹茶の深緑の味が喉に通って苦味がとても美味しかった。
地面から結構離れた縁側に皆足を出したりしながら並んで座った。
「………思い出したいな」
遥が呟いたのに、皆が耳を傾けた。
「こんなに毎日が楽しくって。
きっと過去に辛い思いもしてる気がするのに、何にも思い出せないのが悔しい。
皆と過ごした時間に感じたこと思い出したいよ……」
遥はウルッと瞳にきたものに目を閉じた。
「俺が!……心を取り戻してみせる」
原田が立ち上がって着物を脱いで遥にお腹を見せつけた。
「ほら!この傷!覚えてるだろ?思い出したか?どう思った?」
原田のお腹にある切り傷を見て遥が苦笑いを浮かべた。
「やめて下さいよ―ι」