時のなかの赤い糸
かならず迎えに行くから
(急がないと……)
山南は屯所を抜け出して、行きつけの店に〝明里〟を迎えにいった。
「あ、啓介様」
店の前で向かってくる山南を見つけた明里が嬉しそうに山南に手をふった。
「急ぎましょう」
「どうして?」
「とりあえず、急ぎます」
グイと、山南が明里の手を繋いで、明里は嬉しそうに頬を赤らめた。
並んで歩くも早足で
二人を照らす月明かりが影をうつしていた。
「明里。」
「はぁい?」
フフフ、と明里はこうしていることに微笑む。
「にやけるのはやめといたほうがいいよ」
「ひどい」
う、と泣きそうになる明里を見た山南は普段開かない目をギョッと丸めた。
「そんなに気にとめるほどかι」
泣かれてはお手上げの山南が明里の目に自分の着物の袖をあてた。
「泣くな……」
「うん。ごめんね啓介様」