時のなかの赤い糸
部屋を荒々しく出ていった藤堂を見て、伊東は表情を歪ませて呟いた。
「無様なものだ。
あのように、一時の情に流されてはいけませぬぞ」
「「はい」」
(何が無様だ、、、)
悔しそうに藤堂は縁側をどしどし歩いていった。
「平助くん?」
遥がそんな藤堂を見付けて中庭から声をかけた。
「あ、遥……」
どしどしと歩いていた藤堂も、遥の姿を見付けて歩みを止めた。
「どうしたの?」
遥は中庭で平隊士の稽古の様子を見ていた
こんな時でも日々は変わらない。
「嫌、別になんでもないよ」
「そう」
藤堂は縁側に座って遥の姿を見た。
二人は無言で、山南の話題にさえ触れない
ただ、互いの悲しみを分かち合っているようだった。
もう、今夜には、山南の罰が行われる。