時のなかの赤い糸
伊東の考えは尊皇攘夷。
何もかわらない意見。
近藤は刀で、伊東は論という違いだけだったのだ。
「私の誠についてお話ししてもいいかな?」
近藤が緊張した圧迫した雰囲気を解くように柔らかい声で話し出した。
「ぜひ聞きたいです」
「私はね、知ってると思うが多摩の百姓だったんだ。元からの武士じゃない。」
伊東は静かに耳を傾けた。
近藤の声はどこか聞きたくなるような優しい声をしている。
まさか刀を振り回して幾人も斬ってきたなんて思わない。
「一度江戸で講武所に勤めることが決まったんだけどね、身分が悪いと落とされたんだ」
伊東も知らない真実。
辛い過去なのに昔の笑い話のように話す近藤。
「悔しくはないのですか?」
「ええ、その時は凄く悔しくてね、納得がいかなかったよ」