時のなかの赤い糸
「佐之助さんと仲直りしてね」
(え……?)
真っ暗な夜道、その影は侍の格好をしていて、優しい声をしていた。
遥と原田の言い合いを知ってる者が、遥よりも先の道にいるわけがない。
だけどこの影
この声
もしも奇跡を信じるなら……
「平助くん―――――……?」
遥が一歩ゆっくり歩みよる
また一歩
また一歩
だんだん月明かりに照らされた影が溶けていく。
「生きてたんだね!!」
影の顔を見るなり、遥の声に明るみが帯びた。
影が静かに笑う。
「確かに武士は戦で死ぬことは本望だよ」
影は遥にゆっくり近付いた。
「でも平助くんは生きてるじゃない」
「ごめんね、遥」
“遥”と呼ぶ影の声が二重に聞こえた。
奇跡を信じたいのに―――――……