時のなかの赤い糸
二人で出合茶屋のお会計を済ませようと玄関まで降りる
「え?もう帰りはるん?」
奥の部屋から出てきた女将が慌ただしく小走りで来た。
「え、はい。…なんかごめんなさい」
永倉は懐から財布を出そうとすると、女将が「ちょっとまった」と手のひらを見せた。
遥も永倉も女将の訳の分からないけど行動に首を傾げる。
「さっきいはった二人のお侍はんが延長料金まで払いはったんよ?」
“延長料金”!?
遥は顔をブワッと赤くして女将が「ほら」と見せたお金を受け取った。
「延長しません!!」
土方も山崎も嫌な奴だと遥は顔を赤らめながら永倉の着物の袖を引っ張って外に出た。
「そ、それじゃあ」
永倉が女将に挨拶すると、女将は口をポカンと開けて、「ほなまた」と気の抜けた返事を返した。
(もお来ませんーっ)