時のなかの赤い糸
1867.12.9
屯所に戻ると同時に、門の前に女の姿を見つけて遥は永倉をおいて走り出した。
「風呂敷!!…ですよね?」
その女は先程の床の女で、遥を見つけるなり、女も遥へ距離を縮めた。
「時間をかけてしまい申し訳ありませんでした」
「うちこそ、急ぎの用事があったから、床におらへんで堪忍でした」
二人そろって深々と頭を下げる様子を見ながら永倉はフッと気が抜けたように笑った。
「風呂敷です。中身は大丈夫そうですか?」
遥は女に風呂敷を返すと、女はしゃがんで地面で風呂敷をほどきだした。
「あります。よかった」
女は風呂敷の中から手帳のような物を取って胸の前で抱き締めた。
「……それは?」
気になった遥が女に聞いた。
「ポトガラ。見はる?」
遥がコクンと頷いて、女はゆっくりポトガラを開いた。