時のなかの赤い糸
「俺が大変やったのに、永倉さんと久々の逢瀬かいな」
“逢瀬”と言う言葉に、急に体温が上がった。
こんな時でもさっきの事が鮮明に思い出せる。
(私ってばぁ~!!ι)
「ごめんなさい山崎さん」
「嫌、」
「……ですよね。」
「口付けしてくれたら許すけど」
山崎の目は
本気で、遥は一瞬だけ思考停止してしまった。
「できません。ごめんなさい」
そうとしか言い様がなくて、遥にはそんな言葉しか浮かばなくて
言った後に俯いてしまった。
「……俺の何があかんねやろ。
何で永倉さんじゃないとあかんの?」
山崎には分かりきった答えだった。
それでも天井を見ながら呟く。
いつか、土方も自分にそう言っていた事を思い出した遥が、顔を上げる。
「もし、初めて会ったのが俺やっても、遥は永倉さんを慕うんやろう」
山崎はため息を吐きながら遥の髪に触れた。