時のなかの赤い糸


「……あんた」



永倉の声に支えてくれた男の人を見上げた。



「あ、滝本さん」




幕府の滝本だ。新撰組では顔馴染みで、永倉は遥に見えないところで思いっきり顔をしかめた。




「遥、……久しぶりだな」

「はい、近藤さんの見送りですか?」




「あぁ」と滝本が悲しげに頷いた。



「遥、絶対に新撰組の名を出してはいけないからな」

「どうして?」

「そんなことすれば遥も、永倉さんたちもお縄頂戴だ。
近藤さんはそんなこと望んでない」




永倉が遥の隣に立って手を握った。



「だから」



滝本は気にせずに言葉を続ける。


「叫んですぐ逃げるんだぞ」



滝本らしくない言葉に遥は笑みを浮かべた。





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