時のなかの赤い糸
(どうせ無茶するんだろ?)
首を川に傾けた近藤が笑みを浮かべる。
清んだ川は緩やかに流れていた。
(情けない顔してるよ)
自分の表情を見て近藤は呆れた。
死ぬのは怖いが誇らしかった。
幕府の役にたつことができ
こうした形で幕府のために死ぬ事が出来るのだ。
ゆっくり目を閉じると、自然の音が自分を無にしたようだった。
やめてくれ
俺に無を与えてくれるな
俺は新撰組局長のまま死にたいんだ。
「─────────近藤局長!!!!!」
聞こえた声に近藤は目を開けた。
(捕まっても知らないからな。
しっかり手をひいて逃げてくれよ永倉くん)
近藤は静かにまた目を閉じた。
もう、無にはなりそうにない