~異種魔法異能力挌闘SFファンタジー~ 帝竜 -ミカドノリュウ-
第一章:はじまりのとき;Opening
「急いでください! 兄さん!!」
少女の声が聞こえた。
黒く、長い髪を紫色のリボンでポニーテールにした少女は、自転車の後ろからサドルに座って必死の形相で自転車をこぐ少年に檄を飛ばす。
ペダルを必死でこぐ少年のほうは、少女と同じで黒く、横に伸びた髪の下に愛想のよさそうな糸目を携えている。そんな顔に似合わない低い声が、少年の口から響いた。
「……んなこと言ったってなぁ! ……重いモンは重いんだよ!!」
「それを大切な妹に言うセリフですか!? まったく誰のせいでこんな事になったと思ってるんですか!!」
「俺をとっとと起こさなかったお前だ!!」
「違います! 十六回も起こそうとしたのに布団から顔も出さない兄さんのせいです!!」
フンガァッ!という気合の一言とともに、自転車の速度がさらに一段階上がる。
「あと二分しかありません!! お願いですよ! 入学式に遅刻だなんて恥ずかしい真似させないでくださいよね!!」
「じゃあ自分で自転車こぎゃぁいいじゃねぇか!!」
「兄さんみたいにこんな速度で走れま……! きゃあ!!」
曲がり角を急カーブ。幸いこのあたりは人通りも車通りも少ないので事故にいたる確立はかなり低い。
「危ないですよ! 安全運転を……!!」
「ゆっくり行きたかったんならなんで俺を待つ意味があったんだよ!!」
「あのまま放っておいたら兄さん絶対学校サボるでしょ!!」
「サボらねぇって! 遅刻はしても学校には行く……よ!!」
さらに急カーブ。少女の悲鳴が道路に置き去りにされた。
「絶対ウソでしょ!兄さんは放っておけば大切な妹の入学式もすっぽかすような人なんですから! だいたいそれを一番理解してるのはわたしなんですからね!! あぁもうあと一分もない!!」
「安心しろ! もう校門はすぐ目の前だ!!」
道行く先には確かに学校の校門が見える。少年は「ぅうおおぉ!!」という掛け声とともにラストスパートをかける。
「安心しろって……校門から校舎までどれだけ距離があるかわかってるんですか!!」
「安心しろ! 校内を走れば済むことだ!!」
「そんなんじゃ済みません――!!」
少女の悲痛な叫び声は、桜の花びらが散る青空の中に溶け込んでいった。
少女の声が聞こえた。
黒く、長い髪を紫色のリボンでポニーテールにした少女は、自転車の後ろからサドルに座って必死の形相で自転車をこぐ少年に檄を飛ばす。
ペダルを必死でこぐ少年のほうは、少女と同じで黒く、横に伸びた髪の下に愛想のよさそうな糸目を携えている。そんな顔に似合わない低い声が、少年の口から響いた。
「……んなこと言ったってなぁ! ……重いモンは重いんだよ!!」
「それを大切な妹に言うセリフですか!? まったく誰のせいでこんな事になったと思ってるんですか!!」
「俺をとっとと起こさなかったお前だ!!」
「違います! 十六回も起こそうとしたのに布団から顔も出さない兄さんのせいです!!」
フンガァッ!という気合の一言とともに、自転車の速度がさらに一段階上がる。
「あと二分しかありません!! お願いですよ! 入学式に遅刻だなんて恥ずかしい真似させないでくださいよね!!」
「じゃあ自分で自転車こぎゃぁいいじゃねぇか!!」
「兄さんみたいにこんな速度で走れま……! きゃあ!!」
曲がり角を急カーブ。幸いこのあたりは人通りも車通りも少ないので事故にいたる確立はかなり低い。
「危ないですよ! 安全運転を……!!」
「ゆっくり行きたかったんならなんで俺を待つ意味があったんだよ!!」
「あのまま放っておいたら兄さん絶対学校サボるでしょ!!」
「サボらねぇって! 遅刻はしても学校には行く……よ!!」
さらに急カーブ。少女の悲鳴が道路に置き去りにされた。
「絶対ウソでしょ!兄さんは放っておけば大切な妹の入学式もすっぽかすような人なんですから! だいたいそれを一番理解してるのはわたしなんですからね!! あぁもうあと一分もない!!」
「安心しろ! もう校門はすぐ目の前だ!!」
道行く先には確かに学校の校門が見える。少年は「ぅうおおぉ!!」という掛け声とともにラストスパートをかける。
「安心しろって……校門から校舎までどれだけ距離があるかわかってるんですか!!」
「安心しろ! 校内を走れば済むことだ!!」
「そんなんじゃ済みません――!!」
少女の悲痛な叫び声は、桜の花びらが散る青空の中に溶け込んでいった。