~異種魔法異能力挌闘SFファンタジー~ 帝竜 -ミカドノリュウ-
 朽葉が言うには、カーキーはあそこの事務所で寝泊りしているらしい。常磐はこのあと事務的作業が残っているので後から帰る。璃寛と檸檬は寮が近いのでゆっくりしてから帰るらしい。
 高等部付近で朽葉がたこ焼きをおごってくれた。藍奈は二つほどそれを食べると、この辺に寮がある、とさっさと帰っていってしまった。

「茜はどこの寮なんだ?」

 何気なく麟紅が問うと、茜は「え?」と顔を上げて、慌てて手を振った。

「え、あ、いや、わたし! そうじゃなくて! その、あの……!」

「落ち着くでござるよ茜殿。寮生じゃないのなら通いということでござるか?」

「え? あ、はいそうですそうです! その辺に、はい!」

 物凄く怪しい言い方で、これはもうウソを言っているとしか思えない。指摘してやろうかと口を開いたが先に朽葉が口を開いた。

「ウソはいかんでござるよ。そんなウソじゃ璃寛じゃなくてもわかるでござるよ。どういう生活なのか、拙者に話せばいいでござる」

 朽葉はにっこり微笑み、茜の肩に手を置いた。ビクッと茜の体が反応した。
 茜はしばらく悩んだあと、ゆっくりと口を開いた。

「外で……林の辺りで生活してます……でも、大丈夫ですよ……もともと狐ですし……つら」

「ウソはいかんと言ったでござるよ」

 茜は下を向いて黙り込んでしまった。
 そして、何を言おうとしたのかわからないが、朽葉が口を開いた瞬間。

「だったら家へ来ませんか?」

 紫音の大声がさらに茜を驚かせた。「は?」と口を開きかけた麟紅を制するように、朽葉も言葉をつなげた。

「それは名案じゃのう。拙者の家にと思ったがあそこには拙者の家族がいるからの。肩身せまい思いをして生活するより同級生がいる家で生活したほうが楽じゃろ。な?」

 笑いながら、朽葉は麟紅の肩に腕を回してきた。
 この状況、「いや、困る」とか言って逃れられるような状況ではない。茜は「いいのかなぁ」という表情をしているが、紫音と朽葉はその気になってしまっている。エロゲ的展開はもう逃れることはできそうにない。

「わぁったよ、好きにしろ。もうどーにでもなれチクショー」

 輝かしい笑顔で笑う三人に、麟紅は普段の声よりもさらに低い声でため息をつく他なかった。

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