~異種魔法異能力挌闘SFファンタジー~ 帝竜 -ミカドノリュウ-
 声のした方向を向くと、まぁ、予想通り学園の高等部の制服を着た少女が立っていた。
 目に付くのは赤みの強い茶色の腰まで届く長い髪。瞳は大きく黒い。その姿を見れば十人が十人誰でも振り向くだろうな、と麟紅が感心してしまうほど、少女はかわいかった。

「す、すいません……あの、高等部の正面玄関って……どこですか?」

 恐る恐る尋ねてくる少女の顔はとても形がよく、言ってしまえばアニメ顔。悪く言えば童顔ともとれそうだが、簡潔にまとめて言うと、要するにカワイイということだ。

「転校生か? 正面玄関なら生徒玄関のすぐそばだから案内するよ」

「あ、ありがとうございますぅ……」

 緊張のせいか最後のほうはゴニョゴニョとしか聞こえなかったがまぁお礼の続きでしかないだろう。とにかく転校生という予想は外れていないようだ。
 麟紅は手短に少女を送ったあと、一人教室がある三階までの階段を上っていた。クラスの他の奴は一階と二階の間の階段ですれ違い、「急げよ」と声をかけられはしたがめんどくさいので急ごうともしない。進級してまだたった一週間しか経っていないのでクラスの他の半分ほどの奴の顔を覚えれていない。さっきの奴、名前なんだっけか……と思いふけながら、ふと、脳裏をさっきの少女が駆け巡った。

「そういえば名前聞いてなかったな……相当かわいかったから名前ぐらい聞いときゃよかったぜ……」

 久しぶりに胸がキュンと来た少女なので、また会う機会があったらぜひとも名前を聞いてよろしければケータイのアドレスも聞いておこうかと一人で勝手に妄想し、教室に鞄を置いた後早足で体育館に向かった。



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