~異種魔法異能力挌闘SFファンタジー~ 帝竜 -ミカドノリュウ-
 次の日の朝のショートホームルーム。
 ただ担任がやってきて、グダグダと無駄話を交えながら一日の日程を連絡していく。要点だけ話せばよかろうに、と考えつつ結局はその要点すらも聞いていない麟紅だったが、なぜか今日はいつにもましてソワソワしている。
 なんか悪いことしたっけかな? と自分の行いを思い返すが、特に思い当たるフシもない。じゃあ一体この感じはなんだ?
 すぐに思いついた。昨日の少女だ。あの少女のことが、いまだに心に引っかかっているのだ。女々しい奴だ、と自嘲した。
 周りで自分の妹に関する話がいまだに飛び交っているが、もう耳を傾けるのも面倒になってきたので、一時限目が始まるまで寝ようとした、が、
 ガラリと教室の扉が開かれ、担任が楽しげに入ってきた。
 『東鳳院 煽烙(とうほういん せんらく)』。本名かどうか疑わしい名前だが、本人は本名だと言い張っている。教師になったばかりでそれでも二十二という余計にふざけた年齢も、その年に似合わない真っ白の白髪頭も、人をあざ笑うかのような笑い目も、鋭く尖ったあごも、スーツのくせに手に扇子も気に食わないし、何よりその上の美形。これを気に食わずに何を気に食えというのか、と暴れたくなる。
 それもだが、麟紅がこの上もなく気に食わないのはその態度だ。決して表には出さないが、いつも感じる人を見下すような目、口調、笑い方。少し、というよりかなり気の短い麟紅としては、それだけでケンカの種になるというもの。ただ面倒を起こしては妹に文句を言われるので今は静かにしていることにしている。
 煽烙はえらく上機嫌だった。周りのほかのクラスメイトたちも首をかしげ、そんなニコニコ顔の担任を唖然と眺めていた。そして、その顔のまま煽烙は口を開いた。

「皆さんに嬉しいお知らせですよ。このクラスに転校生がやってきました」

 んなバカな、新学年になってまだ一週間だぜ、と不信感丸出しでクラスを見渡してみると、他のクラスメイトもそう思っているようだった。
 煽烙はその気配を察知したのか、ゴホンと咳払いを一ついれ指を一本立てた。

「論より証拠ですね。夕凪さん、入ってきていいですよ」

 時期外れの転校生に思わず首が伸びてしまった。
 思わず「あ」と言ってしまうのを、ようやくこらえることができた。



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