あなたの名前は忘れたけれど。
「りかさん、今日もおつかれさまでした」


日払いで手渡されるその日の仕事の成果。

渡された諭吉と目が合う。


『汚い』


そう言われた気がした。


受け取りのサインをして、私はお店を出た。

時刻は12時半だった。


街も少し落ち着きだして、酔っ払った人達とすれ違いながら私は車を停めている駐車場へ向かう。


握りしめた諭吉はまだ言葉を放っているのだろうか。


車に乗り込み、ため息を1つ。

ポケットに入れていたタバコを手にとり、一本取り出し口に咥える。


男たちのアレよりも細いタバコが私の口に一番フィットする。


火をつけようと再びポケットに手を入れ、ジッポを取り出した瞬間諭吉が1人座席の下に落ちていった。
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