あなたの名前は忘れたけれど。
薬物中毒者だった。


ただの変質者相手に、俺が呼ばれた理由はすぐ分かった。


典型的な症状の数々。

痩せこけた頬。


虚ろな目。


俺はあと何度、俺を写さないこの目と目を合わせたらいいのだろうか。


不審者扱いで現行犯逮捕。

後に検査の結果、薬物取締り法違反で逮捕。


この先の彼の人生の扉を閉める音がした。


取り調べの最初の頃は禁断症状に苦しんでいた彼も、徐々に俺に心を開いてくれていたのが分かった。


「俺、愛されたかったんですよ」


少し目を伏せて、やけに遠い目をして。


「勇気、お前はどうなりたかったんだ?」


度々面会に来ては彼と話をする。
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