あなたの名前は忘れたけれど。
徐々に人間味を取り戻して行く彼。親しみを込めて、俺は下の名前で彼を呼ぶ。


勇気。


「俺ですね、一人っ子で、兄弟のいる友達からはよく羨ましがられました。

けどね、俺、1人だったんですよ。本当に」


なぁ、勇気。


「親父が見せてくれたのは、背中だけでした。働く男の生き様!みたいな。

俺はどの家庭もそれが普通だと思ってたんです。


可愛がられた記憶が無いんですけどね。


母親は、女でした。

どこまでも女でした。


男にいい顔をして、父の居ない昼間に、平気で知らない男を家にあげるくらいに」


なぁ、誰がお前を責められる?
< 52 / 125 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop