あなたの名前は忘れたけれど。
これでよかったと、言い聞かせる。


よかった。


彼女から俺の顔が見えなくて。


きっと、酷い顔をしていたんだろうな。


俺も、お前も。


通い慣れた道をただ帰る。


いつもと違うのは、もう明日からこの道を通る事は無いのだと言うこと。


ハンドルを握る左手の薬指は、街灯に照らされるたびにキラキラ光っていた。


嬉しいと思う。


単純に、好意を寄せている相手から告白をされたら嬉しいと思う。


けれどその感情にストップをかけるのは、俺自身。
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