あなたの名前は忘れたけれど。
私は手探りで拾い上げ、拾い上げた瞬間、駐車場のほのかな明かりの下、再び目が合った。


諭吉は相変わらず『汚い』と言っていた。


私はグシャリとそれを握りつぶし、ポケットに直す。


タバコに火をつけると口の中いっぱいに煙の味が広がった。


苦くて、臭くて、ジーンと痺れてゆく。


吐き出した煙が、少し開けた窓の隙間から逃げてゆく。


涙が一筋

頬を伝った。


生きていく為には仕方のない事だ。

死にたくても死ねないのなら、生きるしか無いのだ。

こんなにも死にたいのに、明日なんて来なきゃいいのにと毎日願うのに。


願ってもない明日はいつもやってくるのだから。
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