あなたの名前は忘れたけれど。
お前の声が聞こえる。

好きだと言われて、振り向きたい気持ちを堪えて、靴紐を解こうとしていた左手を見つめて。


精一杯の、答えだった。


許してくれ。


いや、許さなくてもいい。


こんな最低な男が居たと、一生お前の中で俺を刻んでくれてていい。


俺は、道を間違える事は出来なかった。


お前も助けたかったけれど、俺はもうお前よりも先に助けなければならない相手を見つけてしまった。


同時に溺れていたらきっと、できる限りの策を練るのだろう。


けれど、どちらかしか助からないと分かっていたのだとしたら。
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