あなたの名前は忘れたけれど。
「私、彼氏できた」


鼓動が速くなる。

彼に付いた、はじめての嘘。


返答次第でどうするかを考えていた。


けれど私の予想を遥かに上回って、彼は言った。


「そっか」


ただ一言。

その後、何もなかったかのように彼は行為を続けた。


あぁ、そっか。


何かを感じた私は、ただただ身を任せた。


なんだかんだ、私のことが好きなんだろうな、っ自惚れてた。


そう、自惚れだった。

彼氏ができた事はあってもすぐ別れていた。彼以上に好きになれなかったから。


彼に、彼氏が出来たと言った事は無い。

言ってしまったら、もう会えないような気がした。
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