あなたの名前は忘れたけれど。
彼女は小銭を全て拾い上げると、ぺこりと軽い会釈をしてコンビニを出て行った。


俺は、店員に無愛想にタバコの番号を伝えた。


コンビニを出ると彼女の姿は既に無く、俺は車に乗り込む。

明日もすれ違うだろうか。


いつのまにかそれが楽しみになっていて、明日の事を考えながら車のエンジンをかける。


気分はいつもより少し上機嫌だ。


彼女が何を思い、何を悩んで泣いていたのかは分からないし、実際に言葉を交わす事も無ければただのすれ違うだけの存在で。


俺しか気付いていなくて。
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