俺の女に触るな!
トモはちょっと変わった不登校児だ。別にイジメられてるわけでも引きこもりでもない。ただ単に行きたくないときは行かない、のだ。それによって被る叱られや反省文には全く動じない。でも、不良ではない。グレてもいない。髪型も制服もごく真面目な中学生だ。喧嘩が滅法強いらしい怖いもの知らずのヤンチャなガキだけど、世の中でただ一人、お母さんにだけは滅法弱い。
まあ、大変なマイペース病というか、ひねくれた我が儘というかなんというか……、そのくせ人見知りときた。よくわからん問題児なのである。
「ヤヨも飲めよ」
「え?」
差し出したのは自分の飲みかけ。私は受け取り、飲み口を眺めた。昔はそんなんなかったのに、さいきんこういう何気ない間接キスでも意識する。
「おい」
「……」
「ヤヨ」
「え?……はっ?はい、あ、何?あ、ありがと」
ぼうっとしてた自分に自分で照れてトモが口をつけていた飲み口に何も考えず慌てて吸い付く私。
あれ?
……この野郎……
空じゃん!