私の好きなお好み焼き屋の店長は私の好みです

双子

ストレートの黒い髪を手櫛で梳きながら、伊織は足を組みなおした。

茶色のボブカットの沙織は姉のその仕草を片目に、自分の頭をバリバリと掻いた。

きっと伊織は患者さんたちの憧れの的なんだろうし、沙織は子どもたちに求婚されると笑いながら言う。沙織先生と結婚するのは僕だ、と、幼稚園児が喧嘩した話は確かちょうど一年前の話。

三人で笑っていると、小学校の頃を思い出す。

いつまで経ってもクラスに馴染めず女子グループから外れ気味だった私が落ち込んでるのを見て、当時違うクラスだった二人が休み時間のたびに私に会いに来てくれた。

彼女たちの話はいつも楽しく、私を笑顔にしてくれる。

一度二人に、ありがとう、と言ったことがあった。

私に笑顔をくれたのは二人だから、ありがとう。

二人はきょとんとした顔を見合わせ、笑って言った。

私たちに笑顔をくれたのはミサだよ。こっちこそありがとう。
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