私の好きなお好み焼き屋の店長は私の好みです
沙織が明日も仕事だと言うので、二人を送るために外に出た。

九月の風は、生温い。

この風が冷たく感じられる頃、私はあの店長とともに働くことになる。

月を見上げる。

空に穴が開いているみたいに、ぽっかりとした満月。

「じゃあね」

伊織が私の頭に手を置いた。

ブーツを履いた彼女の背は、先刻部屋で見たときよりも幾分高くなっている。

「うん、今日はありがとね」

私は、頭に置かれた伊織の手に自分の手を重ねて言った。

「あんた、可愛いって自覚持ちなよ」

伊織が私の目を見て、いきなりそんなことを言った。

「なにそれぇ?」

「自信持てって言ってんの」

「そうそう」

黒のパンプスを履いた沙織も、私の肩に腕を回しながら言った。

双子サンドイッチ状態。

私は自分の状況に苦笑しながら、それでも笑った。

「ユースケのことばっか考えちゃだめだよ。良い人だから振るのは可愛そうだとか、そういうのは傲慢だし」

「……はい」

私は小さな声で返事をした。
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