私の好きなお好み焼き屋の店長は私の好みです
足が浮かれるのを止められず、雨の道を小さくスキップしながら歩いた。

面接だからと選んだお気に入りのパンプスが雨に濡れるのを、綺麗、と思って眺める。面接が終わって、急に自分が大人になったみたいだった。

これからあの人と共に働けるなんて、すごく嬉しい。手の中で、傘の柄をくるくると回す。

ぱしゃ、と水溜りを踏んだそのときだった。

今クールで一番だ、と私が豪語するドラマのエンディング曲が、バイブの震えと共に私に届いた。

ドラマは四人の男子高校生を中心に描く青春グラフィティーなのだが、ミステリーの要素も持っており、回を追うにつれて謎が謎を呼びどんどんと引き込まれていく。

そんなドラマに使われているエンディング曲が明るく楽しい曲のはずがなく、私は好きなはずの曲に一つ溜息をついて携帯電話を取り出した。

表示を見て、急に気分が、晴れ間の虹を期待するオトメ心から、雨をうっとうしいと感じる現実へ引き戻された。

綺麗なパンプスも、次の瞬間には雨に濡れ重くなった靴へと変わる。

お気に入りのパンプスなのに、私はどうして水溜りを歩いてしまったんだろう、という思いが私を支配する。雨が憎い。それ以上に、電話をかけてきた相手を恨んでしまいそうで、私は唇を噛みながら発話ボタンを押した。
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