私の好きなお好み焼き屋の店長は私の好みです

デート

思ったとおりのデートコース。

ユースケは私をまずレストランに連れて来た。ファミリーレストランなんかじゃなく、郊外にある高級レストラン。二人の間にはキャンドルが立てられ、ゆったりとしたピアノ音楽が流れる。

目の前の彼は肉を口に運ぶ私を見て、にこにこと笑っていて、私はその笑みにイラついた。

「なに?」

「ミサ、久しぶりに会ったから、嬉しくて」

「久しぶりって、三日会わなかっただけじゃん?」

「頭では判ってるんだけど、会いたい会いたいと思ってると長く感じるんだよねぇ」

「……ふーーーん」

車の中でも幾度となく繰り返された会話。うんざりする。

私はワインに手を伸ばしたが、瞬間飲む気が失せて手を引っ込める。

その手を握り、膝に置いた。手は自分のものと思えないほど冷たくなっていた。

これじゃダメだよ。

私は涙が出そうになるのを堪えた。

「え、なに? 大丈夫?」

「大丈夫……」

彼が私の表情を見て驚いて声をかける。

私は既に、溢れてくる涙を止めることが出来なかった。

「どうしたの? 何かあった? あ、フレンチ嫌だった?」

「違うの」

ユースケは盛んに明るい声を出し、私の前でおろおろし始めた。

「違うの」

もう一度繰り返し、鞄からハンカチを出して目元を押さえる。

「大丈夫? 何か食べたいものあったら言って?」

何でこんな優しい人が、私の彼氏なんだろう。何で私はこの人で満足できないんだろう。好きなのに、好きなはずなのに、彼の嫌なところばかり探している自分がいる。
< 7 / 21 >

この作品をシェア

pagetop