カタヲモイ、解消シマス。


「あなたは、食べないんですか」

「やめてよ。そんな甘ったるいの……」

「ひとくちどうです?」

「……胸焼けするだろうし。見ているだけで吐き気がするよ」



『イズモくん』


あの呼び方をされることは、もうないんだろうね。


「そんなこと言わずに。さあ」


皿を持って隣にやってくる。


「え、なに。ウザ」

「あーん」


フォークには、一口分に切られたパンケーキが刺され、たっぷりと生クリームが乗せられている。


「殺す気? 食うわけないでしょ。そんなモンスターみたいなの」

「そうか。これは、イズモくんにとってモンスターなんだね」

「ああ。だから、はやくどけて……」


――え?


「イズモくんの見える世界って。わたしと全然違うんだね」


胸がざわつき始める。


「いくら考えても理解できないや。あなたが、あの夜。なにをしていたのか」

「……なに、言ってるの」

「あなたがなにを抱えているのか」


記憶が、戻った?

いや、でも、そんなわけない。


これまでそんなやつ、一人もいなかった。


僕に操られたものは死ぬまでそのままのはず。

< 100 / 110 >

この作品をシェア

pagetop