カタヲモイ、解消シマス。


「うまくいきますかね」


店内に二人きりになると、マスターが口を開いた。


「いくさ」

「『マッサージしてあげるといい』なんて。あまり、ぼっちゃんらしくないアドバイスでしたが。もっと直接的なことを言うかと」

「キスしてみろとか?」

「いいえ、それ以上のことをさせると思いました」

「十分さ。とにかく、文字通り距離を近づけてやりさえすれば、あとは相手がなんとかするだろうから。女の子の方からアプローチされ慣れてる男に自分からがっついてどうするの。逆効果でしょ。向こうからこさせなきゃ」

「おっしゃる通りですね」


彼が青葉に手を出さない理由なら、ひと目みて、よくわかった。


――汚したくないんだ。


大切に、している。

気持ちをセーブしている。


だから自分から触れられないのだろう。

他の子には触れられても青葉は特別なんだ。


放っておくわけない。あんな子が傍にいて。


「付き合うと思いますか? 彼女と、例の幼なじみの男性は」

「どうだろうね」

「では質問を変えましょう。男女関係になるとお考えですか」

「間違いなくなるね」

「年頃の男女が、密室に二人きり。その上、スキンシップなんてとれば仲も深まるとお考えなのでしょう?」

「ああ」

「ですが。十年も家族のように過ごしてきたのですよ。そう簡単に歪められますかね」

「誘うんじゃない。誘わせるんだ。近づき、すきをみせる。歪めたくなるようなシチュエーションだけ用意してやる」

「まずは相手の自制心を壊してしまえと」

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