カタヲモイ、解消シマス。


紅に戻ると、マスターがソファに座り、机に足をあげていた。


「ちょっと。そこ、テーブルなんだけど」

「俺の店でなにをしようと。俺の勝手だ」

「お客さんに提供するもの置くとこは清潔にしなきゃ」

「うるせぇよ。あとで除菌するさ。まあ、ここはお前しか通さないがな」


閉店後のマスターは、大抵こうだ。

表向きの執事風なアレは作り物。


「それで。森川には会えたのか」

「君が教えてくれた通り、あの店にいたよ。気持ち悪くて話が通じない相手だった」


だから、堕ちてもらった。

あんな男が教師であり父親なんて……。


「知らぬが仏って。こういうことかな」

「使ったのか。力」

「まーね」


ワガママ言わずに僕の言うことだけ聞いておけば使う気なかったんだけど。

あれ以上の会話は無意味だろうから。


二人で堕ちてもらうね。


残念なセンセイも。


そんなセンセイの本性に気づけず、既婚者だと知りながら“恋人”になろうとしたお嬢様も。


欲にかられて他人の不幸も顧みない鬼みたいな連中、ターゲットにしないわけないよね。


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