カタヲモイ、解消シマス。


「美味いもん、しばらくおあずけなのか?」

「んー、来週あたりに一人、堕ちてくれそうではある」


フォークにオレンジ色のパスタを絡めながら思い出すのは、三ヶ月前に誕生させたカップルのことだ。


「お前ってさ。力がなくてもモテるだろ」

「なに言い出すのマスター」

「それとも。俺にある程度使ってんのか?」

「まさか。力使うのだって体力いるからねえ。そう簡単にやらないさ」

「俺、お前のこと結構すきだぜ」

「はいはい。そんなこと言ってもサービスしないよ」

「別になにかして欲しいわけじゃない。伝えておこうと思ってな」


貪欲に見えて、無欲。


「チュウくらいはしたいけどな」


こんなの口だけだ。

実際は微塵も思っていない。


そんなだから期待も絶望もしないのだろう。


「マスターって昔からそうなの?」

「さあ。昔のことなんて、忘れたなあ」


どうせ覚えているクセに。

まあ、なんでもいーか。


今のこのマスターとの距離感はちょうどいいから。


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