カタヲモイ、解消シマス。
「異性として扱われない理由に。思い当たる節は? 彼との関係性も手短に教えてくれ」
「幼稚園から仲のいい、いわゆる幼なじみってやつで。もうすっかり家族みたいな関係になっちゃってることが理由」
ここで
背筋の伸びた、執事のような身なりの長身の男がやってきて、青葉の前にコースターを置く。
僕は彼をマスターと呼んでいる。
コースターの上にグラスを乗せた。
静かに、そっと。
耳心地のいい、氷同士のぶつかるカラカラという音が聞こえてくる。
「あの。頼んでませんが……」
明らかに水ではないそれを見て、青葉が戸惑う。
「ああ、それはサービスさ」
「え?」
きょとんとする青葉に、
「外は暑かったでしょう。ゆっくり涼んでいって下さいね」それだけ言うと、マスターは戻って行った。
「ありがとう。あなたのおかげ?」
さっきまでの警戒心はもう見られない。
はやくも彼女は僕のことを敵ではないと判断したようだ。
もっとも、敵であると困るという気持ちのあらわれでもあるのだろうが。
「そんなことより。家族みたいなって? 血のつながりもなければ名字だって違う赤の他人なんだろう?」
「そりゃそうだけど。なんていうか、当たり前のようにお互いの家を行き来したり。ご飯一緒に食べたり」
「風呂に入ったり?」
「ば……バカなの? そんなこと。もう、してないよ」
「もう?」
「幼稚園くらいの頃は、まあ、してたけど」