JKのアタシが異世界転移したワケなんだけど、チートなのは相方の方でした
思考回路がショートする。
 口を開けて動かないアタシを見てイケメンさんは首を傾げた。
 アタシも傾げたいんだけど、体が上手く動かない。

「どうなされました、マスター?」

「マスターって……。あ! もしかして貴方もマンホールに落ちたんですか?」

 分かったぞ。この人はきっとアレだ。
 マンホールに落ちた時、頭をぶつけて記憶障害を起こしてるんだ。
 そうだろうか? いや、そうに違いない!

「何を寝ぼけたことを申されているのですか? もう一度言わせていただきますが、私は貴女様のモノです。まさか、お忘れになってしまわれたのですか?」

「なん……だと?」

 いつの間にこんなイケメンを飼いならしたんだアタシ。
 全くもって記憶にないぞ。まさか、無自覚なだけでとんてもない魔性の女だったのか。
 お、落ち着け。まずはアレだ。
 初対面の人にあったら取り合えず自己紹介だ。
 千尋、対人関係の基本を思い出して!

「あの。お、お名前をお聞きしても?」

「……はぁ」

 おい。なんだよ、そのため息は。
 あと、その「やれやれ、そんなことも分からないのですか」みたいな侮蔑を隠す気のない表情さぁ。
 今すぐ、やめろ。居たたまれなくなるから、秒でやめろ。
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