JKのアタシが異世界転移したワケなんだけど、チートなのは相方の方でした
「こんなくだらねぇ現実にいたくねぇよ。転生かトリップして俺TUEEEEな異世界に行きてぇ……」
中間テストの2時限目が終了した休み時間。
クラスの隅っこの席で、コミュ障のオタクデブがずっとブツブツ一人で呟いている。
下手すりゃアタシもああなっていたのか、と目線だけをそちらにチラリと送る。
アニメや漫画、ゲームは好きだ。
でも、アニメ好きの友達と会話のネタにする程度でオタクや腐女子の域には達していないと自負している。
聞こえよく言うなら、『嗜む程度』ってヤツかな。
目の前に集まる数人の友人達が先ほどのテストについて話しかけてくるので、視線を戻してして笑顔で冗談を言い返す。それを聞いた友人達がケラケラと笑った。
高校2年になったアタシこと――宮間千尋(みやまちひろ)は、小学生時代とは打って変わって明るい少女になった。
学力、体力は共に中の上。彼氏は今のところいない。
クラスで孤立することもなく、友人達と買い物やカラオケに行くしプリクラだって撮りまくっている。
いつも持ち歩いているバインダー式のプリ帳は、教科書より分厚くなっている。
テスト期間中でも先生にばれない程度に薄いメイクをする。
どんな時でもおしゃれは怠らない。女子高校生の鉄則だ。
何処からどう見たって、極々普通のJKを見事に演じきっている。
会話の合間に鞄からiPh●neを取り出して、画面をちらりと見てからLI●Eに適当なコメントを打ち込む。それから暗くなった画面を鏡代わりにして前髪をサッと整えた。
こう言う細かなことに気を使わなくちゃいけないのは正直、疲れる。
だけど、今だにブツブツ何かを呟いているキモオタデブの様に無視されるのは御免だ。
2度と陰キャぼっちになったりなんかしない。
そのためなら何だってやってやる。
例えそれが、自分を偽ることになってもだ。