JKのアタシが異世界転移したワケなんだけど、チートなのは相方の方でした
道を行きかう人が、工事現場の人々が叫んでいる。
悲鳴やら怒号やらで、何を言っているのか内容は全く聞き取れない。
その叫びを引き裂いてギュィイイイイと言う不愉快極まりない音が辺りに響く。
横断歩道を渡り終えようとしていたアタシの目の前には今まさに横転しそうになっている巨大なクレーン車。
そしてガギンッ! ギュンッ! と太いワイヤーの先に着いた金具が弾け飛び、鉄骨が頭上に降り注ごうとしている。
「な、何……これ? ど、どうなってんの!?」
中間テストが終わり、数人の友人達と足早に下校を始めたアタシ。
その中の誰かが、『サーティ●ンのアイス食べようよ!』と言い出した。
もちろん、アタシもそれに賛成しておもむろに鞄の中を見た。
愕然とした。鞄の中に財布がなかったのだ。
そう言えば、今朝から財布に触れていなかった気がする。机の上に置いて来たのだろうか?
その事を友人達に申し訳なさ気に伝えると、『千尋って案外ドジだよねぇ。じゃぁ、一回帰ってから合流しよ!』
アタシは、別にドジっ子じゃないと思うんだ。
誰にだってミスする事ぐらいはあるでしょうに……と言うわけで、そのまま遊びに行く友人達と別れてアタシは帰途についたのだ。
ただそれだけの事だったのに、これは一体どう言うことだ。
「ひぃわぁあああああッ!?」
ヤバい。これ、女の子が上げていい悲鳴と違う! と自分に自分でツッコミを入れてしまいたくなる、微妙な悲鳴を上げてしまった。
もうちょっと可愛らしく『きゃぁあ』とか言えば良かったのだが、そんな叫び方を選んでいる余裕はなかった。
今まで出した事のない瞬発力で、アスファルトを蹴って後方に走った。
スカートが捲れてパンツが見えようが、鼻水が垂れてようがそんなのはご愛嬌だ。
大目に見て欲しい。今一番大切なのは自分の『命』だ。