Short stories
え?

その時ふと感じたぬくもりに俺は麻衣を見た。

「離さないで……もう離れたく……ない」
泣きながら、震えた声で小さく言われた言葉と、麻衣の手が俺の指を握りしめた。

「麻衣?」
俺はその言葉の意味を、確かなものにしたくて麻衣の肩を持って距離を取った。
そして、麻衣の瞳を覗き込む。

「だから!もう離さないでっていってるの……好き……ずっと好きなの……」
最後は叫ぶように言った麻衣を、俺は慌ててもう一度抱きしめる。

2度と離さないように。

「もう離さない。麻衣好きだよ」
心を込めて、今までの分を埋めるように、俺は麻衣の唇にゆっくりと口づける。

「私も大好き」
キスに照れたような表情を浮かべた麻衣は、昔のままの笑顔を俺に向けた。


そんな麻衣に、俺はもう一度キスをする。
君の笑顔を守れるように。

一生守るから。

だからお願い、俺のそばにいて。それは俺の切なる願い。


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