Short stories
「あなたって、……」
「あなたじゃない。彰浩」
上からかぶせるように言った俺に、美琴は言いかけた言葉を言えず口をパクパクさせていた。
その姿が可愛らしくて、おもしろくて俺は笑うのをこらえながら言葉を続けた。
「呼び捨てでも、あきくんでもなんでもいい」
俺は久しぶりに素で話せることに、自分でも驚くほどどんどんと言葉を浴びせた。
「もう!」
そんな俺を見かねたように、美琴は声を上げると俺を睨みつけた。
「なんでもいいけど、いつも初対面でこんなに話すの?これだから自分に自信のある男って……」
この言い方だと、男で嫌な思い出もしたのだろうか?
そんな疑問が頭を過り、俺はゆっくりと言葉を発した。
「いつもじゃない」
「え?」
その言葉に驚いたように、怒っていた美琴は俺を見上げた。
「いつもこんな風に声をかけない。いつもの俺は、花屋の俺だから」
その言葉の意味を少し考えた後、美琴はバラの花に視線を向けた。
「そう。じゃあいい」
これが俺と美琴の出会い。