Short stories
「美琴?」
そんな事を思いながら目の前の彼の顔をみていたのだろう、私を呼ぶ声でハッと意識を戻した。

「あっ、ごめん。ぼんやりしてた」
慌てて目の前のコーヒーカップを手にすると、クスリとあきくんは笑う。

「俺に見とれてた?」
その言葉に、危うく口の中のコーヒーを吐き出してしまいそうになり、ゴホゴホと咳込んだ。

「悪い!」
慌てて私におしぼりを渡してきたあきくんに「バカでしょ!」となんとか照れ隠しのように言うと、私は大きく息を吐いた。

「冗談だろ。なに?就職活動うまくいってないの?」
私のぼんやりした原因をその事だと思ったのか、あきくんは心配そうに私の瞳をみた。

「あっ、違うの。その事があって今日は連絡したんだった」
私は今日勇気をだしてあきくんに連絡したことを思い出した。
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