Short stories
「誰であっても嫉妬してしまうよ」
これでもかと完ぺきな笑みをして、俺は立ち上がる。
「あ……あきくん……?」
そんな俺を啞然として美琴は見ていた。

「はじめまして。僕、今美琴さんとお付き合いさせて頂いています」
そう言ってジャケットから名刺を取り出す。

「え?あの大手の花屋の専務さん?」
隣の女の子も、爽やかな笑顔の俺に視線を向ける。

「僕の大切な人がお世話になったようですね。ありがとうございます。でもこれからは僕がおりますので」
サラリと言葉にするも、有無を言わさない圧を掛けると俺はその男を見据えた。

「あっ、行こう……」
それだけを言うと、その男は女の子の手を強引に引いて自分たちの席へと歩いて行った。

小さく息を吐くと、俺は席に座って美琴を見る。

「悪い、余計なことした?」
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