Short stories
運ばれてくる、キラキラした前菜を前にも私は、気になっていたことを言葉にした。
「あきくん、本当はただの花屋の店長じゃないんだ……」
「え?」
その言葉に、ワイングラスを持っていたあきくんの手が止まる。
「あのフラワーショップ全国展開しているお店よね。そこの専務なの?」
その言葉に、一気に空気が変わるのが解り、理由がわからず私はギュッと唇をかむ。
「美琴はそれが嬉しいの?」
冷たく低い声に、ビクリとする。
嬉し訳ないじゃない。さらに遠い人になるよ……。
そんな思いから私は、なにも言えず俯いた。
目の前から小さなため息とともに「ごめん」と聞こえ、私は反射的に顔を上げた。
「美琴の祝いの席に俺なにやってんだよ……」
呟くように言ったあきくんに、私は小さく頭をふる。
「美琴、食べよ。俺の肉もやるからな」
高級なお店でそんなことしていいの?そう思うも、私は今のザワザワした気持ちをなんとか抑えると、目の前の料理を口に運んだ。