Short stories

「美琴」

食後のコーヒーが運ばれてきたころ、あきくんが真面目な表情で私をみた。

「なに?」
その表情に何か悪いことを言われるのかと、私は内心怯える。
「まだ……未練あるのか?」

「ないよ!あんな男」
少し伺うように言ったあきくんに、私は食い気味に応えていた。

私の顔は真っ赤かもしれない。

「よかった」
あきくんから発せられた言葉に、私は驚いて顔を上げた。

「よかった?」
そんな私の言葉に、明らかにあきくんはしまったといった顔をすると、私から視線を逸らす。

そして数秒何かを考えたような表情の後、ジッと私をみた。

「よかったよ。美琴がもう前の男を忘れてるなら。新しい恋踏み出せるだろ?」

ああ、そう言うこと……。
俺の役割は終わって事?

「そうだね……」
泣きたくなるのをギュッと押さえて何とか言葉を発したが、今日が最後と言われているのだと理解した。

どうせ最後なら……。

そんな思いからまた、かわいくない自分が顔を出す。
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