お前なんか×××!!!
持ってる鍵に反応して、自動ドアが開いたと同時に中に飛び込むと、誰かの胸の中だった。

泣き顔で、息を切らしている私。

「おい、どうした?」

そう言ったのは。

「じ、ん」

向こうに、逃げ出した黒い影が見えて、仁はそれを追いかけようとした。

でも、私はそれをさせなかった。

いや、怖くて、仁にしがみついてたから、出来なかったのだ。

「…バカ野郎!こんな時間に、女独りで歩きやがって!俺がどんな思いでいつも絶対一緒に帰ってたと思ってんだ!」

怒鳴り声とは裏腹に、抱き締めるその腕は優しい。


私は怒鳴り声なんて聞こえなくて、抱き締めるその腕に安心してひたすら泣いた。

いつまでもこんなところで泣かすわけにもいかず、仁はとりあえず、自分の家に連れ帰り、ソファーに座らせると、箱ごとティッシュを渡される。

それでも私はなんとも思わず、受けとると、勢いよく鼻をかむ。

その行動に、仁すらもなんとも思わない。

私が泣きじゃくった時は、ずっとこんな感じだったから。

…こんな感じだった?

…そうか、優しいところもあったのか。

少し落ち着いた頃、目の前にホットミルクを差し出した仁。

「ありがと…グス」
「色気ねぇな」

憎まれ口にも動じない。

私はそれをゆっくり飲んだ。

落ち着く…冷えた心も温まる。
< 15 / 80 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop