お前なんか×××!!!
…マンションの部屋の前、なかなか自分の部屋に入ろうとしない仁が気になって、振り返ると問いかけた。

「どうしたの?自分の部屋に戻らないの?」
「ん?んー…あのさ」

何か言いたげな顔をして、私を見つめる仁。

私は次の言葉を黙って待つ。すると。

「今晩一緒に飯食わねぇか?」
「いいけど。…じゃあ、うち来る?簡単なものなら作れるよ」

私の提案に仁は頷くと、二人で中に入った。

…和風スパゲティと、サラダを用意して、テーブルに並べると、二人で食べた。

その間も、仁はなんだか様子がおかしい。

さっきまでは普通だったのに。

…食べ終わり、お茶を仁の前に置くと、静かにそれを飲んだ。

「…仁、私に何か言いたいことあるんでしょ?勿体ぶってないで、言いなさいよ」

私の言葉に、仁は一呼吸置くと、驚きの言葉を放った。

「…これからしばらく、一緒に帰ってやれない」
「…え?」

「仕事が認められて、大きなプロジェクトに入ることになってさ」
「そうなんだ!凄いね!よかっ

たじゃない」

何事かと思って不安になったけど仕事が認められたと言われたので、ホッとしたと同時に、喜んだ。

喜ぶべきことだから。

それなのに、仁は浮かない顔をしている。

「仁、嬉しくないの?」
「…嬉しいよ、仕事が認められたんだから、嬉しいに決まってる」

「じゃあ、なんでそんな顔してるの?もしかして、私を送れなくなること気にしてるの?私は全然気にしないよ?幼なじみの出世じゃない」

「嫌なんだ」

「何が?」


「お前を誰かに盗られるのが」

…。
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