お前なんか×××!!!
その理由にめをパチクリさせる。

でも、クスクスと笑い出してしまった私を見て、仁は不貞腐れた顔をする。

「何が可笑しいんだよ?」
「だって、くだらないから」

そうでしょう?私は仁の事が好きなのに。

誰に盗られるって言うんだろう?

「くだらないからって、俺には凄く重要な」
「…はい、これ」

私は棚の中の引き出しから出したものを仁に差し出す。

信用されるにはこれしかない。

「…鍵?」
「そ、この部屋のスペアキー。確かに、一緒に帰れなくなるのは寂しいけど、会いたくなったら、いつでもここに来ればいい。毎晩、仁の分の夕食も用意しといてあげるから。私は誰にも盗られない。それがその証。それじゃダメ?」

「…」

何も言わず、鍵を見つめる仁を他所に、私は食器を片付け始める。

スポンジに洗剤をつけて、食器を洗っていると、突然後ろから仁が私を抱き締めた。

私は驚いて、食器を落としそうになるも、なんとか阻止した。

「もう、ビックリするじゃない」
「…楓は、俺のモノだって思っていい?」

洗っていた手が止まる。

「…仁は、誰のモノよ?」
「え?俺は俺のモノだろ?」

「…ばか!私だって、私は私のモノよ!」

…思い合ってるのかいないのか?これではわかりかねてしまうが。

好きだって言って欲しいし、言いたい。

私は食器の洗剤を流しながら、ポツリと呟いた。

『あんたのこと、好きだからね。』と。

聞こえたのか、聞こえなかったのか?

仁はそれには答えることは無かったが、私を抱き締めて離さなかった。
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