お前なんか×××!!!
その時の事は、うろ覚えだった。

ずっと傍にいた筈の楓が、この世から居なくなったら?

そう思うと、目の前が真っ暗になった。

後から聞いた話では、俺は車の下から、楓を助け出すなり、ずっと抱き締めていたそうだ。

意識のない楓の顔を何度も優しく撫でながら、名前をただただ囁いていた。

やっと我に返った時には、楓はベッドに寝ていた。

頭や腕には包帯が巻かれていた。

俺は眠る楓の手を握りしめた。

良かった…生きてる。

それだけで引いていた血の気が一気に戻った気がした。

…楓の怪我は擦り傷と軽い打撲だけで、大したことはなかった。

念のため、二、三日の入院をして、退院となった。

本当に良かった。


それは、良かったのだが、退院の日、遅れて病院に入った俺を待ち構えていたのは、あまりに悲しい現実だった。


「…楓」
「…」

俺の呼び声に反応するも、目をぱちくりさせて、俺を凝視する楓。

「今日退院の日だろ?楓の両親と一緒に迎えに来たんだ」

「…ママ」

楓は不思議そうな顔で母親を見上げた。

「仁君よ。迎えに来てくれたのよ」

母親の言葉に、楓は、俺の顔を再び見るなり怯えた目をした。


「…私、こんな人知らない」
「…は?」



…これから始まる長い長い一週間の始まりだった。

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