お前なんか×××!!!
あれだけ俺を避けていたのに、どうしてここまで来たのか?

俺は何も言えずに、楓を見つめることしかできなくて。

「帰っちゃうの?」
「ぇ、あー、うん」

「…寺崎君」

そんな呼び方、今の今まで、一度もされてこなかった。

俺は困ったように笑って、楓に答える。

「…何?」

「ぁの、…何も思い出せなくて、ゴメンね」
「しょうがないだろ?元々は全部俺の責任なんだし」

…そうだ。楓が俺を助けてくれて。そうでなければ、俺はここにはいなかったかもしれないんだから。

「ありがとな、楓。お前のお陰で、俺は生きてる」
「…」

「覚えてないよな…でも、ありがとう…じゃあ、俺、帰るから」

ブランコから立ち上がると、楓の肩をポンポンと叩いて、家路につく。

…クンッ。

と、後ろに引っ張られ、俺は驚いて振り返ると、楓が俺の服の裾を引っ張っていた。

「どうした?」
「…」

何も言わないので、困り顔で楓の顔を覗きこむ。

「楓」
「…私と、寺崎君がどんな関係だったのか、聞いてもいいかな?」

「…知っても、嬉しいこと一つもないと思うけど」

「…でも、私は寺崎君を助けたんだよね?そうした理由を知りたいから」

…しばらく考えて、もう二度と、俺に近寄らなくなるかもしれない恐怖にかられながら、全てを話すことを決意した。

俺は再びブランコに座り、その横に楓に座るよう促すと、今までの事を話始めた。
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