彼・・・私の天使。
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大音量で好きな音楽を聴きながらの運転もストレス解消には最適だけど、助手席で安心して乗っていられるのも幸せの一つかな。
おまけに若くてキレイな横顔眺めながら……。そう思って、その通りな今の状況に、ちょっと慌てた。
彼は、たまたま知り合った、う~んと年下のボーイフレンドの一人。そう友達。
二十年とは言わない。あと十五年若かったら……。なんて考えてたら頭痛がしてきた。そう。私、頭を打ったんだ。そのせいね。
赤信号で車が止まって
「あの、最後にジムのロビーで会った中年の紳士は、どなたですか?」
「えっ? 紳士? あぁ、ジムのオーナーよ」
「オーナー。そうなんですか」
「何で?」
「すごく心配そうだったから」
「そりゃそうでしょう。ジムのプールで会員死亡なんて事になったらお客様が減って大変だもの」
って笑ったら
「変な冗談止めてください」
えっ? 怒ってる?
「本気で心配したんですから」
ちょっと拗ねてるような横顔が可愛いと思った。
マンションの駐車場に車を入れてもらって、シートから降りて立ち上がったら目眩がして、結局、部屋まで送ってもらう事になった。
私の部屋の九階までエレベーターで昇って行く。まだ頭痛がするし……。
そういえば……。改めて考えたらノーメイクだった。お休みで近くに買い物くらいはスッピン。今さらカッコつけても遅いし、一番酷い状況を見られた訳だし。
こうなったらヒラキナオリしかないよね。四十路女は強く生きなきゃなんて考えてたら九階に着いて……。
部屋に入れる? 入れない? どうしよう。今頃こんな事に気付くなんて。
強い四十路女は何処行ったのか……。
部屋のカギを開けて「ありがとう。じゃあ」って訳にはいかない?
ええぃ! 大人の貫禄っつうものを見せてあげるわよ。本当かしら、内心ドキドキしてるクセに……。
「どうぞ。散らかってるけど……」
「あ、はい。じゃ、おじゃまします」
「その辺適当に座って。お茶でも入れるわね」
「あっ、かまわないでください。携帯、出してください」
「えっ?」
「もし具合が悪くなったら、お友達の女医さんに、すぐ連絡してくださいね。無理しないで、ゆっくり休んでください。じゃ、僕は帰ります。お大事に」
「送ってくれてありがとう」
天使は天使のままで爽やかに帰って行った。