彼・・・私の天使。
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準備中に掛け替えてあったのに、お店のドアが開いて
「申し訳ございません。本日のランチは終了いたしました」
見ると天使が立っていた。
「どうしたの? きょうはドラマの撮影だって……」
「さっき記者会見で大切な人が居るって話した。あなたがテレビで見るよりも先に言おうと思って。詩織さん、僕と結婚してください」
「…………」
天使の顔を見つめながら何も言えなくて、ただ涙ぐむ私を天使は優しく抱きしめた。
その頃、テレビのワイドショーでは記者会見が流され奥で遅い昼食を取っていたスタッフが
「社長、テレビで……」
と言いかけて笑顔で戻った。
同じ頃、スポーツジムではテレビを見ながら
「啓君、失恋だね……」
と女医の玲子。
「はい。えっ? 何で知ってるんですか?」
「気が付かないとでも思ってた? 他にも居るんでしょう? 詩織に憧れてたインストラクター」
「はい」
「今夜は、やけ酒、付き合うわよ」
「じゃあ、彼らも誘っていいですか?」
「いいわよ」
「七人……。いや八人かな?」
「えっ? そんなに居るの? あっ、そういえば今夜大事な用があったんだ。忘れてたわ」
「そんなぁ。先生、待ってくださいよ」