彼・・・私の天使。

2


 準備中に掛け替えてあったのに、お店のドアが開いて

「申し訳ございません。本日のランチは終了いたしました」

 見ると天使が立っていた。

「どうしたの? きょうはドラマの撮影だって……」

「さっき記者会見で大切な人が居るって話した。あなたがテレビで見るよりも先に言おうと思って。詩織さん、僕と結婚してください」

「…………」
 天使の顔を見つめながら何も言えなくて、ただ涙ぐむ私を天使は優しく抱きしめた。



 その頃、テレビのワイドショーでは記者会見が流され奥で遅い昼食を取っていたスタッフが
「社長、テレビで……」
 と言いかけて笑顔で戻った。


 同じ頃、スポーツジムではテレビを見ながら
「啓君、失恋だね……」
 と女医の玲子。

「はい。えっ? 何で知ってるんですか?」

「気が付かないとでも思ってた? 他にも居るんでしょう? 詩織に憧れてたインストラクター」

「はい」

「今夜は、やけ酒、付き合うわよ」

「じゃあ、彼らも誘っていいですか?」

「いいわよ」

「七人……。いや八人かな?」

「えっ? そんなに居るの? あっ、そういえば今夜大事な用があったんだ。忘れてたわ」

「そんなぁ。先生、待ってくださいよ」
< 100 / 108 >

この作品をシェア

pagetop