彼・・・私の天使。
4
二人で外へ出て
「車は?」
「スタジオに置いてきた。タクシーで来たんだ」
「じゃあ、私の車、運転してくれる?」
「もちろん喜んで」
キーを渡し二人で車に乗り込んで
「二十二時にはスタジオに戻らないといけないから遠くには行けないけど。どこへ行きたい?」
「どこへでも。あなたの行くところなら付いて行くから」
「それプロポーズの返事だと思っていいの?」
「はい。私で良ければ」
「ありがとう。そう言ってくれると思ってた」
天使の笑顔に私も微笑んだ。
「じゃあ、一番近くの海を見に行こうか?」
少し車を走らせ海岸に着いた。
「冬の海って誰もいないのね」
「だから、いいんでしょう?」
遠くで揺れる白い波を見ていたら急に視界が遮られ天使にキスされていた。それは、そっと唇に触れるだけの優しいキスだった。
唇が離れて目の前で天使に見つめられていた。
「愛してる。きっと幸せにするから」
温かな手が私の首すじに触れて、もう一度、唇を塞がれた。
なんだか、いつもとは違う気がして何故だか胸がドキドキしていた。まるで初めての時のように……。
天使のことなら、もう何もかも知っているはずなのに……。
すると……。
「何でだろう。ドキドキしてる。初めて、あなたにキスした時みたいに。ちゃんと大人の男に見られたくて無理してたから」
「そうなの? とっても慣れてるように見えたけど……」
「あなたが初めてだとは言わないけど、そんなに経験豊富じゃないよ。知れば知る程どんどん好きになったの、詩織さんが初めてだから」